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Spoiler の基本原理を忘れずに [MU-2]

忘れてはならないのは、Spoilerは飛行機が蓄えていたエネルギー(即ち運動エネルギーand/or位置エネルギー)を「棄てる」装置であるという事です。

Spoilerは滑空比の良いグライダーが早く『高度を下げたり』、着陸時の『ブレーキとして』重用される(必須な?)機構です。Spoileron と呼び方が変わったことによって、MU-2ではその原理特性を忘れてしまったのではないでしょうか?

グライダー以外で、推力重量比の大きな戦闘機ならともかく、余剰推力の小さなMU-2に、エネルギーを捨てる(結果として高度と速度を犠牲にする)装置は採用すべきでなかったと言えるでしょう。MU-2は、離陸後(ポジティブ確認後)直ちに脚上げ・フラップ収納が推奨されるほど、パワーに余裕がない(なかなか加速できない)飛行機なのです。

Spoiler展開→抵抗増大→速度(運動エネルギー)低減

翼面流れ剥離=Lift減少→(両翼作動:Spoiler)→高度(位置エネルギー)低下

(片側作動:Spoileron)

Spoiler 作動側の翼が下がる→(繰り返すと)→高度がどんどん落ちる①
作動側に機首が偏向→(繰り返すと)→速度がどんどん落ちる②↑

さきに紹介したC-17の事故は、短時間に左右に大きくロールをうつような、即ちSpoileron を繰り返し作動させたため、①と②が顕著になり始めたところで、

高度を保つ為に機首をあげる→(パワー余裕なし)→失速→横滑り→スピン→crash③
↓(パワー余裕あり)
水平飛行可能

③の顚末を迎える事となったようです。

B-52の事故は、高度を維持している間は釣り合い旋回出来てたように見えますが、その限界を超えた途端に横滑りを起こし、Spoileron も全く効かないままcrash しています。

C-17もB-52も、元々そんな飛び方を想定した機体ではないので、これらの事故は飛行機の特性(限界)を失念したパイロットのヒューマンエラーが主要因と言えそうです。

少し横道にそれますが、派手なデモフライトで思い出したのは浜松でのE-767の飛び方です。
https://youtu.be/HvR4Ix-WmL0
導入まもない頃、運動エネルギーを位置エネルギーに変えて上昇しながらですが、90°に達する左バンクをうってみせました。

敵のミサイルをかわす訓練として常日頃やってたとしても、ベースが767でしかも背中に余計なものを背負ってる形態で、リスクを伴うマニューバです。B-52の事故の事もあるし、これはNGだろ!と感じました。さすがに、この飛び方に対してお咎めがあったのか、その後は比較的おとなしく飛んでいるようです。

さて、MU-2は航空自衛隊の救難機として29機調達され、そのうち4機が Fatal Accident を発生し16名の犠牲者を出してしまいました。救難ミッションではV-107ヘリコプターとペアを組み、V-107より先に現場に急行し遭難者の捜索などにあたることから、捜索の為に「低速で長時間旋回する」必要がありました。

開発(MHI)、機種選定(航空自衛隊)、最初のFatal Accident の事故調査(防衛庁(当時))、2回目の事故調査、機体損耗率が1割を超えた3回目のcrash のいずれかの段階で、『螺旋不安定』な特性を持つ飛行機を「低速で長時間旋回する」ミッションに充てるべきでない!と進言できる人は現れなかったのでしょうか?

航空自衛隊は4回目の Fatal Accident の事故調査を受けて、ようやく救難機としてのMU-2の早期退役を決断したようです。一方、陸上自衛隊ではその後もMU-2(LR-1)の運用を続けましたが、『螺旋不安定』の特性(欠点)についてどのような議論・考察がなされたのか?非常に気になるところです。ちなみに陸上自衛隊のFatal Accident は2件(20機中の2機)で9名亡くなっています。
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