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MU-2擁護派のスタンス [MU-2]

米国のMU-2擁護派は、その高速性能(および経済性)をかっている一方で、MU-2がその代償として強い「癖」を持つことも、彼らの多くは認識しています。でも、彼らはその改善を機体側に求めるのではなく、そんな「癖」を持つMU-2を乗りこなすに必要な技量を、適切な「訓練」によってパイロット側が持つべきだと主張してきたようです。

米国における、MU-2懐疑派と擁護派それぞれのコメントとFAAの対応などについて纏められた記事を、以下のリンク先に紹介します。
http://www.iasa.com.au/folders/Safety_Issues/FAA_Inaction/whatswrongwithMU2.html
先に Spiral Instability (螺旋不安定)についての証言の出典として紹介したものと同じ記事です。

MU-2に「螺旋不安定」の傾向がある事を証言した米国のパイロットは、それを「癖」として認識し「訓練」によって克服できる、という擁護派でした。けれども、日本では、MU-2が企画されるよりも昔、昭和32年に発刊されたの航空工学の教科書に『飛行機は螺旋不安定であってはならない』(再掲)と明記されていたのです。

パイロットの技量を磨くことによって事故を減らすことはもちろん必要です。でも「技量」は世代が変わる毎に、あるいはシステムが変わる毎にゼロから築き直さねばなりません。当然、訓練によっても必要な「技量」レベルに到達しない人間を確実にeliminateできる体制も求められます。

MU-2が「教科書」どおりではなかったものの、開発当時の「法律」に則って世の中に出回ってしまった以上、試験結果の改ざんのような余程の落ち度がない限り、行政上はMU-2を悪者扱いすることは出来ないとは思います。

ただ、特有の「癖」を持つMU-2を『安全に乗りこなす為に欠かす事の出来ない訓練』を受ける事なく、不幸にしてFatal Accident の犠牲となった方々の無念を思えば、事故から得るべき多くの教訓を、あと200機あまりの退役してゆくMU-2に反映する事が、もはや無理としても、せめて将来の航空機に活かさねばならないと思います。

民間機に軍用機並みの「機動性」を求める必要はありません。しかし、民間機と言えども軍用機並みに「不安定」な特性を抱えるからには、OEIなども含めた外乱に対する「安定性」を確保(保証)するために、軍用機並みに「応答性」の確実な操舵システムを採用すべきです。

ちなみに、全天候を売り物にしていたMU-2は、Anti-iceシステムの不備が事故原因とされた例が多くあり、その対策としての改善処置はなされているようですが、ハードウェアとしての対策に目処があっての事だったのでしょう。

こと「安定性」に関しては、航空機の基本設計に起因する特性である事から、その改善は別の飛行機を作り直すに匹敵する事を意味し、莫大な追加コストが発生するという点は理解します。

MHIもFAAもMU-2の Fatal Accident の発生率が同クラス他機種に比べて高い事を痛感したものの、それぞれメーカーの事業採算性、擁護派オーナーの圧力に屈しての決断だったのでしょう。
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