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螺旋不安定に起因する?Fatal Accident [MU-2]

OEI後のFatal Accident

1981.08.10 宇都宮におけるLR-1(MU-2の陸上自衛隊仕様機)の事故(5名死亡、1名重傷)
出典:
EA403019-6297-4DAE-BCF3-D19BE95ABD1E.jpeg
生還への飛行 加藤寛一郎 講談社+α文庫 p362-364
および
http://ptd6557.blog80.fc2.com/blog-entry-1221.html

2004.12.10 米国コロラド州でのMU-2B-60の事故(2名死亡)
出典:
http://www.iasa.com.au/folders/Safety_Issues/RiskManagement/killu-2.html
および
https://app.ntsb.gov/pdfgenerator/ReportGeneratorFile.ashx?EventID=20041221X02013&AKey=1&RType=Summary&IType=FA

国内でMU-2が片発停止(OEI)後に墜落したことが判っているのは、この宇都宮での事故だけであり、非常によく似たケースを米国の事故例でたまたま見つけて、心に引っ掛かるものがあったのでここに記事として残しておきます。

この2件に共通するのは以下の3項目で、LR-1では管制官との交信と生存者の証言から判明した状況も付記します。
・左エンジンが停止
・管制官は右旋回を指示(LR-1では右旋回不能と判断した後、直進を試みている)
・左旋回からSpinに入り墜落(LR-1では意図せず左横滑りに突入)

MU-2B-60の Flight Manual の Emergency Procedures (下記出典のpdf 298/675)の Engine Failure のくだりには、機速とフラップ角度とゴーアラウンドの際の高度限界(400フィート)以外に、バンク角度などの数値的な制約は見当たらなかった。
出典: 注意!データサイズが大きいので表示に時間が掛かります
http://givdemo.com/images/N360RA%20POM%20&%20AFM.pdf
pdf 246/675までが Operating Manual で
pdf 247/675以降が Flight Manual

LR-1事故情報の出典の著者もコメントしているように1981.08.10の事故については Wikipedia にも記載がなく、何かしらの「忖度」があったようですが、宇都宮での教訓が陸自→MHI→MHIA→FAA→米国ユーザ経由で展開されていたら、コロラドでの事故は Fatal に至らなかったかもしれません。

バンク角過大が原因とされた Fatal Accident

2005.04.14 新潟県での航空自衛隊機の事故
「事故原因は失速まで充分な速度の余裕のない状態でバンク角が過大となったことにより、航空機が失速に陥り回復操作が間に合わずに墜落した」
出典:
https://ameblo.jp/suisuiwalk/entry-11567770055.html
このケースではエンジンは正常だったようですが、最終的にスピンに陥ったことに間違いないでしょう。 先の Flight Manual (表紙の発行日9-24-85)では、バンク角の制限値は見つけられなかったのですが、2005年秋のFAAによる一連のアクション結果として纏められたレポート
https://www.faa.gov/aircraft/air_cert/design_approvals/small_airplanes/cos/mu2_foia/media/Appendices.pdf
のp108 (pdf 103/121)によると
「Approved Flight Manual limitation, limiting the bank angle to 30 degrees for OEI operations. Consideration should also be given to restricting the airplane from performing OEI circling approaches and also for OEI missed approach procedures unless continuing the approach to landing could result in a greater hazard. 」
に「Approved」とあるように、ある時点で既にOEI条件下での旋回時のバンク角度制限が設定されていたことが判りました。ただ OEI の緊急事態に水平儀でバンク角をモニターできるのかなと?

両エンジン正常作動時にバンク角の制限があるかどうかについては現時点で不明ですが、要は「横滑り」からの「スピン」を回避する為に、横滑りのきっかけとなるバンク角(ロール操作)に気をつけなさいよということなのでしょう。

裏を返せば、MU-2はフライトエンベロープのある条件で「横滑りし易い」し、また横滑りから回復するための「ロールコントロールが難しい」機体であると・・・これはすなわち「螺旋不安定(Spiral Instability)」な形態であることを意味します。

MU-2の Spiral Instability (Lack of Spiral Stability)についての証言があったので以下に紹介します。
「Having logged about 325 hours in the aircraft in less two years, Taylor admits it flies differently than airplanes with aileron roll control. He said it‘s a “little disconcerting” in that it has a slight tendency to keep rolling in a turn, lacking the spiral stability of some other aircraft he’s flown. 」
出典:
http://www.iasa.com.au/folders/Safety_Issues/FAA_Inaction/whatswrongwithMU2.html

次回は「螺旋不安定」について、まとめる予定です。
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