SSブログ

横隔神経は横隔膜のどこを貫通するか?(11/7追記) [鍼灸]

専門学校1年生の後期になって、授業のペースが早くなり先行きに不安を感じ始めた、今日この頃です。

そんな中で、横隔膜の3大開口部「大動脈裂孔」「大静脈孔」「食道裂孔」を通過する動・静脈、神経に「横隔神経」が含まれるかどうかで、しばらく混乱していました。

<横隔神経が「大静脈孔」と「食道裂孔」を通過する説>
(1)学校の先生によると過去に国家試験出たとのこと(出題時期は不明)
(2)http://melma.com/backnumber_174363_4608856/
11/7追記:(2)の著者である「合格仙人」さんから補足のコメントをいただきました→本ページの【脚注】

<横隔神経が3大開口部以外を通過する説>
(3)ムーア 臨床解剖学 第2版 第2版 101ページ より抜粋
右横隔神経は(中略)下大静脈孔の近くで横隔膜を貫く.
左横隔神経は(中略)心膜の左側で横隔膜を貫く.
(4)ネッター 解剖学アトラス 原書第4版 図193、194および195から以下を読み取り
左横隔神経、右横隔神経ともに縦横隔膜と心膜の間を心膜横隔動静脈と並走して下行し、心臓(心膜)の左右で横隔膜を貫く.

(3)(4)が間違った記載、図示をしているとは考えにくいことから、この時点で、(1)と(2)は何かの間違いではないかと疑い始めたのです。

その後、追加調査をした結果、以下の記載を見つけました。
(5)第5版 イラスト解剖学 中外医学社 59ページ
食道裂孔(中略)食道、左胃動脈、迷走神経、左迷走神経の枝が通る
大静脈孔(中略)下大動脈、右横隔神経の枝が通る
(6)新版 岡嶋解剖学 改訂第4刷 杏林書院 736ページ
横隔神経(中略)心膜横隔動脈と共に、心膜と縦横隔膜との間を下降し横隔膜にゆく。これからの分枝として、
1)心膜枝 Ramus pericardiacus, pericardiac branch
2)横隔腹枝 Rami phrenicoabdominales, pherenicoabdominal branches
がある。心膜枝は主として心膜前面に分布し横隔膜枝(横隔枝の誤記と思われる)は右側は大静脈孔を通り、左側は食道裂孔を通り、横隔膜下面に出て、交感性の横隔神経叢に入る。

ここまでの情報からすると、以下の構図が見えてきます。
******************************************************************
左横隔神経(左心膜横隔動・静脈と共に心膜と縦横隔膜との間を下降)
↓→横隔腹枝の一部:食道裂孔を通過
↓→横隔腹枝の多く:横隔膜の上面左側に分布
心臓の左側で横隔膜を貫通

右横隔神経(右心膜横隔動・静脈と共に心膜と縦横隔膜との間を下降)
↓→横隔腹枝の一部:大静脈孔を通過
↓→横隔腹枝の多く:横隔膜の上面右側に分布
心臓の右側で横隔膜を貫通
******************************************************************
さらに、別の図書
(7)Sobbotta 図説 人体解剖学 第5版 原書第21版 第2巻 体幹・内臓・下肢 121(ページ)
によると、大静脈孔の辺りで横隔神経の末梢が下大静脈にまとわりついている状況が図示されています。

ちなみに(6)の文献の図(Ⅵ-104)においても、「横隔腹枝」は横隔神経が枝分かれした末梢近くを図示しています。

以上のことから現時点では以下の理解をすることとしました。
*****************************************************************
「食道裂孔」および「大静脈孔」を通過するのは、左・右横隔神経から分枝した細い「横隔腹枝」の一部である。
*****************************************************************
左・右横隔神経の「幹」にあたる部分は横隔膜に至るまで、心膜と縦横隔膜の間を「心膜横隔動・静脈」と共に下行し、心臓の左右で横隔膜近くに到達した「幹」が横隔膜上面で分枝した太い「横隔腹枝」が横隔膜を貫通し横隔膜下面でさらに分枝する。
*****************************************************************

11/7追記:【注記】上記(2)の解説について「合格仙人」さんからの補足説明がありましたので、以下に紹介させていただきます。
*****************************************************************
<前略>
「左横隔神経が食道裂孔を通過し、右横隔神経が大静脈孔を通過する。」というメルマガについてコメントを頂いていたようです。気付くのが遅くなり申し訳ありませんでした。
 結論から申しますと、ご指摘頂いている通りです。正確には、「左横隔神経の横隔腹枝が食道裂孔を通過し、右横隔神経の横隔腹枝が大静脈孔を通過する。」としなければならないですね。お詫びをして訂正いたします。

 手元に成書がありませんので、参考となるHPを書いておきます。
 以下は、慶応大学の船戸和弥先生のホームページからの抜粋です。
http://web.sc.itc.keio.ac.jp/anatomy/Rauber-Kopsch/web/2-61.html
 左のものは心尖の後方を回って曲り、前方に凹の弓を描いて横隔膜に達するが、右のものは右腕頭静脈の外側面に、次いで上大静脈の外側面に接して走り、大静脈孔のいくらか前方かつ外側で横隔膜に達する。
 右の横隔神経は各1本の前方の終枝と後方の終枝とに分かれ、左横隔神経は各1本の前方、後方および外側の終枝に分れる。
 後方の終枝は左右とも1本の腹枝を横隔膜の下面に送る(これは右側は横隔膜の大静脈孔を通り、左側では横隔膜腰椎部の1つの尖頭あるいは食道孔をとおる)。
<以下略>
*****************************************************************
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 2

piepienamiki

昔の学会で、茶色に染まった横隔神経が左右それぞれ3部に分かれて横隔膜腹側表面に現れている。右左の支配の境界が食道裂孔の右左側筋束であって腰椎部脚の右脚左脚でないのを鮮明に思い出します。線維性心膜の表面を走り孔は通りません。一見は100読に勝る。
by piepienamiki (2016-03-22 14:42) 

ねこひこ

piepienamikiさん、コメントありがとうございます!

ブログが暫く開店休業状態で放ったらかし、コメントに気付くのが遅れ大変失礼致しました。

専門学校時代に一度だけ解剖見学の機会がありましたが、いろいろ見てるはずなのに情報処理しきれず、結局、目的意識をもって観察した部分しか記憶に留められなかったですね。

自分は、まだまだ勉強不足というか、最近では覚えることよりも忘れてしまうことの方が、多くなってきているようです・・・
by ねこひこ (2018-01-12 20:05) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。