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MU-2のロール操舵 [MU-2]

MU-2がloss of control によりfatal accident に至ったとされるケースの主要因が、この動画に示唆されているように感じたので紹介したいと思います。
https://youtu.be/_GeH4DlAWuQ
Landing の前に何度か左旋回してる様子ですが、操縦輪の操作と機体のロール姿勢がバラバラです。

いちばんきついバンク角は60°をゆうに超えてますが、左旋回中に操縦輪をニュートラルに戻すことがなく、ほとんど右ロールの方向にハンドル(操縦輪)をきったままキープしており、操縦輪があとどれだけ右に回せるのかが非常に気になります。

上記動画の1:35辺りより
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これが意味するところは、以下のどちらかあるいは両方の状態にあるということです。

①釣り合い旋回時
ハンドル(操縦輪)はきっているもののSpoileron は効いていない(効いていれば、バンク角は浅くなる)
つまり、操縦輪とSpoileron の効きがリニアでなく、デッドバントがある(生じている?)ことを意味します。

②横滑り時
上反角効果が足りない分をSpoileron で補正している
上反角効果が足りないとすると、操縦輪ニュートラルのままでは、横滑り時にひっくり返ってしまうことを意味します。

この(動画のきついバンク角の)シーンから、先に紹介したB-52とC-17が、おそらくは操縦輪を目一杯回しきってバンクの山側のSpoiler を立てながらも、深いバンク角を保ったままcrashした時の状況を連想しました。

他にもいくつか動画を見ると、操縦輪の操作が機体の姿勢に反映されるまでのタイムラグの時間幅が広すぎることが判ります。特に低速飛行の際にMU-2は操縦輪によるロール操作が、機体のロール角に即座に反映される場合と、機体が全く反応しない場合があるということです。低速飛行時にはSpoileron による主翼上面の剥離が非常に不安定な気がします。

MU-2の根強いファンには大きく二つにグループ分けされるでしょう。ひとつは純粋にMU-2の高速性能を活かして商売の道具として重宝しているオーナーの方々、もう一つは癖の強い特性のある機体を乗りこなすことを趣味としているパイロット。

自己責任で趣味で飛ばすにしても、手の出しようのない家族や知人の載せたりすべきではないし、loss of control でcrashするという事は地上の人間を巻き込む可能性があるし、何より本人の意思とは関係なくMU-2の職業パイロット(および搭乗員)として事故の犠牲になられた方々が不憫でなりません。

あえて不謹慎な例をあげるとすれば・・・
そんな特性はドライブゲームだけでたくさんです
https://youtu.be/svQzx8OI8PQ

「MU-2」のマイカテゴリーのはじめの項目だてから、随分寄り道、回り道してしまいましたが、考えがある程度まとまったところで、しばらく五月雨式に投稿したいと思います。記事内容の重複などあるかと思いますので、悪しからず。

まだまだつづきます
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安定性を犠牲にした軍用機の工夫 [MU-2]

安定性を犠牲にした軍用機が操舵システムとしてどんな工夫をしているのか、FA-18とF-4ほかの例を紹介しようと思います。

FA-18 の Elevon & Flaperon

FA-18のロール操舵のメインは、水平尾翼全体の迎え角を左右別々に制御する Elevon によります。またFA-18の主翼後縁には内翼と外翼に2分割された Flap があり、外翼の Flap は左右別々に動く Flaperon として機能し、微妙なロールコントロールを可能としています。
https://youtu.be/JYUm5Nl6318
0:50辺りから離陸直前の操舵翼の作動チェックで、FlaperonとElevonがバタバタ動いてるのがよく判ります。

以下の着陸時の写真は両翼のAileron がFlapとして下がっているのが判ります。
FA-18_flaperon.jpg
出典:
https://www.blueangels.navy.mil/assets/img/media/20170606/02.jpg

次の動画は強烈な横風を受ける中、Flaperon とElevonをフルに使って降りてくる様子です。
https://youtu.be/7GQULamPdBI
始めの方はローパス、1:18辺りからタッチダウン、最初に着陸した機体は接地後も横風に煽られないようにFlaperon 、Elevon(接地後に注目)ともに右ロール方向の舵を切ったままです。2機めは接地と同時にエアブレーキを開いた為かElevon舵角の左右差がそれほどありません。高機動を実現する為の強力な操舵システムは、外乱に対する姿勢保持にも威力を発揮しているのです。

F-4 の Aileron & Spoiler

F-4のSpoiler はAileron上面の前方に配置されています。あるサイトによるとAileron(主)によるAdverse Yow対策としてSpoiler(副)を併用した旨の解説がありました。F-4のルーツが艦載機である事を考えれば、ロール操舵の繰り返し操作で高度をロスすることは許されないので、Aileron なしのSpoileron はあり得なかったのです。

左バンクから右ロール操舵
F-4_roll.jpg
出典:
http://www.plane-mad.com/aviation-photos/view/usa-air-force-(usaf)/mcdonnell-douglas-f-4-phantom-ii/las-vegas-nellis-afb/35215.html

左ロール操舵による左バンク
http://www.desktopimages.org/preview/214187/2560/1440/o

右バンクから左ロール操舵
http://www.kabegamikan.com/p/i.php?url=www%2Ekabegamikan%2Ecom%2Fimg%2Ftr%2F14231%2Ejpg&d=s

右ロール操舵による右バンク
http://mmsdf.sakura.ne.jp/public/glossary/pukiwiki.php?%A5%B9%A5%DD%A5%A4%A5%E9%A1%BC

Jaguar の Flaperon & Spoiler

Wikipedia (2018年1月)によるとJaguarのroll control はSpoiler によるとありますが、以下の2つの画像からするとFlaperon にSpoiler を併用しているようです。

左側の Aileron の前方に位置する Spoiler が少し開いているように見えます。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/SEPECAT_Jaguar#/media/File%3ARAF_Sepecat_Jaguar_T2A_Lofting-1.jpg

以下のスライドの1/20と2/20です。
http://slideplayer.com/slide/6020495/

Jaguar といえば、今更ですが、T-2はよしとしてもF-1はSpoileron だけで良かったのかな?

ここで
MU-2新旧モデル
の全体外見。

プロペラ軸が主翼下方にあった当初形態
https://flyteam.jp/photo/188065
プロペラ後流の大半は主翼下面を通過していました。

エンジンパワー増強と供に、プロペラ径の増大によりプロペラ軸は主翼に近づき、さらにはプロペラ枚数が3→4→5翅に
http://propellerpartsmarket.com/stc-kits-mt/mt-stc-mitsubishi-mu-2b/
プロペラ後流の影響が全く違うでしょうに・・・左右のプロペラ回転方向が同じMU-2では低速飛行時に主翼上面に強烈な横風成分がありそうなことから、PS-1, US-1で問題となった「左旋左傾」と同様の癖が、MU-2のバージョンアップとともに顕在化されたはずです。

プロペラ後流の影響をまともに受けるSpoileronは、同じもので大丈夫なのでしょうか?
http://www.flickriver.com/photos/75877584@N05/25244861052/
MU-2のSpoileron のクローズアップ(再掲)

【情報求む】プロペラ後流の影響を受ける領域に、Spoileronとして作用するspoilerを配置した他機種の例をご存知でしたらご教示ください。

MU-2を戦闘機と比べるのは酷かもしれません。しかし、過度なバンク角から態勢を立て直すことが出来ずにcrashに至ってしまったB-52やC-17のように、遠目にもその動きが明らかな大きなSpoilerでさえノーコンになる事があるのに、MU-2の小さな(背の低い)Spoilerが有効に作用する条件はB-52やC-17よりずっと制限されそうです。

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Spoileron機のcrash例 [MU-2]

高速機として設計されたMU-2では、STOLを実現する為に、(ほぼ)フルスパンフラップとSpoileron (SpoilerでAileron機能を担う)を採用しています。
参考:
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Spoileron
http://www.flickriver.com/photos/75877584@N05/25244861052/

Spoileron の特性について考えるまえに、先ずは Spoileron 機の横滑りからのcrashの動画を紹介しておきます。

B-52
https://youtu.be/sEs_2uSLEWA
解説の為にスローになってからの2:00辺りで右spoilerが全開してるのが判ります。
ここまでくると、spoilerでロールコントロールできていません。

C-17
https://youtu.be/Layz-3XxZC4
離陸からしばらくはspoilerの動きに伴ってロールコントロール出来てるのがよく判りますが、墜落前の最後の右ロール後の当て舵で左spoilerが立っても、全く効かないままcrashしてしまいます。

この2件の例から、バンク角が大きくなるとあるところから、spoilerによるロールコントロールが出来なくなってしまうようです、もう少し正確に言うと大気の翼面に対する相対的な流れの(空力的な)問題なので、バンク角が過大となった結果、迎え角と横滑り角のどちらか、もしくは両方が過大となってspoilerが効かなくなるということなのでしょう。

次回まで少し間が空くかもしれませんが、きょうのところは短めにここまでです。つづく
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Spiral Instability(螺旋不安定)について [MU-2]

Spiral Instability(螺旋不安定)

「垂直尾翼が極めて大きく、上反角が小さい飛行機は、横滑りをすると螺旋を描いて降下する。これは螺旋不安定( Spiral Instability )とよばれるが、飛行機は螺旋不安定であってはならない。」

出典:機械工学講座 26 航空工学 岡本哲史 著 共立出版 昭和52年10月25日 初版18刷 p13

まず、後退翼のジェット機が主流となった現代では、教科書の「上反角が小さい」という表現は「上反角効果が少ない」と言い換えた方がよさそうですね。

Spiral Instability は、飛行機の「横安定」における不安定特性であって、Spiral Instability の対極にある不安定特性が Dutch Roll (ダッチ・ロール)であるということもこの教科書で知りました。

Dutch Roll については JAL123便の事故で広く知られることとなりましたが、正直なところ Spiral Instability という言葉を知ったのは最近のことで、上記のテキストは学生時代から持っていたものの、飛行機を設計する仕事はしていなかったので、このくだりは読んでいたかもしれないのですが、まったく認識していませんでした。

余談になりますが、一時期ラジコンをやってたことから、この特性を現象としては知っていたけれども、それが Spiral Instability とよばれるものとは知らなかったのです。模型とはいえ自分の意図に反してラジコン飛行機を墜落させてしまうことを繰り返すと、理屈は解らなくても飛行機にとってどういう形態が「ヤバい」かは、感覚的にわかるようになるので、これから飛行機の設計者を目指す方々には、いろんな形態のラジコン飛行機を飛ばして、それらがどうゆう状況(要因)で墜落してしまうのか是非とも経験していただきたいと考えます。自分で飛行機を操縦することも良い経験となるでしょうが墜落の経験はできたとしても、それでは The End となってしまいますから・・・

本題に戻ります。

「垂直尾翼が極めて大きく、上反角が小さい飛行機」

このフレーズに反応して最初に思い浮かべたのは MU-2 でした。

MU-2は公式には

上反角「0°」

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出典:
「三菱双発ターボプロップ多用途機 MU-2」池田研爾
航空学会誌 第13巻 第143号 (1965年12月) p16-24

とありますが、地上での写真を観ると、むしろ微妙に下反角がついているようにも見えます。飛行中に上反角がきっちり「0°」となるように揚力で撓む分を補正?したのかもしれませんね。

上記出典によると、MU-2では高翼配置の形態による上反角効果が期待できるので、主翼の上反角は「0°」で問題ないとしていますが、YS-11のように上反角効果が机上計算どおりに実機で実現されなかった場合にどうするつもりだったのでしょうか?

また、上記出典のなかで「高翼の場合は、低翼の場合と比べて4~5°の上反角効果を持っていることになる」とありますが、低翼配置では下反角効果が出現するので、MU-2の高翼配置による上反角効果は、その半分の2°程度となるように思います。

以下に述べるように、YS-11が当初の主翼上反角設計値4°19′では不充分で、飛行試験による横滑りからのスピン傾向が強すぎることが判明し上反角を更に「2°」増すことになったという経緯を考えると、MU-2の上反角効果は2°程度で本当に大丈夫なのかなとは思いませんか?MU-2の上反角効果も4°くらいは必要だったのではないか?
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もっと言うと、YS-11の上反角で足りなかった「2°」分は、実は上の図の低翼配置による上反角の減殺分ではなかったのか?という疑惑です。

YS-11の上反角について

YS-11で上反角の設定(上反角効果)が設計通りにゆかず、飛行試験で初めて問題となった話は有名ですが、その問題が「螺旋不安定」だったわけです。
YS-11上反角.jpg
出典:
「半世紀前の型式証明―YS-11の頃―*」藤原 洋
http://www.aero.or.jp/web-koku-to-bunka/2013_12/2013_12.html

YS-11 (1962.08.30初飛行)では三菱の設計陣も関わっていたので、当然MU-2(1963.09.14初飛行)でも上反角(効果)を設計するにあたって設計上なにかしらの「マージン」をとっていたのか、「高翼配置による上反角効果が充分有効であるという前提で」それを補正するために翼端燃料タンクの(主翼面に対する上下の)配置とタンクに付加した「フィン」で微調整を行っています。
出典:
「MU-2G に採用した上反角効果調整フィンについて」上山和夫ほか
日本航空宇宙学会誌 第22巻 第247号 (1974年8月) p33-36

一旦はなるほどと思ったものの、しみじみMU-2のプラモ(長谷川1/72)を眺めていて気になったのは、主翼前縁はほぼストレートだけれども、後縁はあきらかに前進しているし、プラモにモールドされているヒンジラインが正しければ、フラップを下げた際に上反角効果は減じられるのでないだろうか?という疑問もあらたに加わりました。

以上まとめると

YS-11 当初の上反角4°19′→補正後の上反角6°16′
に対して
MU-2 物理的上反角0°+高翼配置による上反角効果2°程度

疑問点
MU-2の設計上の上反角効果は4~5°ではなく、実は2°程度しかないのではないか?
MU-2のフラップ下げ時に上反角効果が減殺されることはないか?

MU-2は、まだまだ米国で運用中なのでMU-2の設計関係者各位は守秘義務によりコメントできないとは思いますが、将来いつか、以上の疑問点などについて解説していただければ幸いです。つづく
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螺旋不安定に起因する?Fatal Accident [MU-2]

OEI後のFatal Accident

1981.08.10 宇都宮におけるLR-1(MU-2の陸上自衛隊仕様機)の事故(5名死亡、1名重傷)
出典:
EA403019-6297-4DAE-BCF3-D19BE95ABD1E.jpeg
生還への飛行 加藤寛一郎 講談社+α文庫 p362-364
および
http://ptd6557.blog80.fc2.com/blog-entry-1221.html

2004.12.10 米国コロラド州でのMU-2B-60の事故(2名死亡)
出典:
http://www.iasa.com.au/folders/Safety_Issues/RiskManagement/killu-2.html
および
https://app.ntsb.gov/pdfgenerator/ReportGeneratorFile.ashx?EventID=20041221X02013&AKey=1&RType=Summary&IType=FA

国内でMU-2が片発停止(OEI)後に墜落したことが判っているのは、この宇都宮での事故だけであり、非常によく似たケースを米国の事故例でたまたま見つけて、心に引っ掛かるものがあったのでここに記事として残しておきます。

この2件に共通するのは以下の3項目で、LR-1では管制官との交信と生存者の証言から判明した状況も付記します。
・左エンジンが停止
・管制官は右旋回を指示(LR-1では右旋回不能と判断した後、直進を試みている)
・左旋回からSpinに入り墜落(LR-1では意図せず左横滑りに突入)

MU-2B-60の Flight Manual の Emergency Procedures (下記出典のpdf 298/675)の Engine Failure のくだりには、機速とフラップ角度とゴーアラウンドの際の高度限界(400フィート)以外に、バンク角度などの数値的な制約は見当たらなかった。
出典: 注意!データサイズが大きいので表示に時間が掛かります
http://givdemo.com/images/N360RA%20POM%20&%20AFM.pdf
pdf 246/675までが Operating Manual で
pdf 247/675以降が Flight Manual

LR-1事故情報の出典の著者もコメントしているように1981.08.10の事故については Wikipedia にも記載がなく、何かしらの「忖度」があったようですが、宇都宮での教訓が陸自→MHI→MHIA→FAA→米国ユーザ経由で展開されていたら、コロラドでの事故は Fatal に至らなかったかもしれません。

バンク角過大が原因とされた Fatal Accident

2005.04.14 新潟県での航空自衛隊機の事故
「事故原因は失速まで充分な速度の余裕のない状態でバンク角が過大となったことにより、航空機が失速に陥り回復操作が間に合わずに墜落した」
出典:
https://ameblo.jp/suisuiwalk/entry-11567770055.html
このケースではエンジンは正常だったようですが、最終的にスピンに陥ったことに間違いないでしょう。 先の Flight Manual (表紙の発行日9-24-85)では、バンク角の制限値は見つけられなかったのですが、2005年秋のFAAによる一連のアクション結果として纏められたレポート
https://www.faa.gov/aircraft/air_cert/design_approvals/small_airplanes/cos/mu2_foia/media/Appendices.pdf
のp108 (pdf 103/121)によると
「Approved Flight Manual limitation, limiting the bank angle to 30 degrees for OEI operations. Consideration should also be given to restricting the airplane from performing OEI circling approaches and also for OEI missed approach procedures unless continuing the approach to landing could result in a greater hazard. 」
に「Approved」とあるように、ある時点で既にOEI条件下での旋回時のバンク角度制限が設定されていたことが判りました。ただ OEI の緊急事態に水平儀でバンク角をモニターできるのかなと?

両エンジン正常作動時にバンク角の制限があるかどうかについては現時点で不明ですが、要は「横滑り」からの「スピン」を回避する為に、横滑りのきっかけとなるバンク角(ロール操作)に気をつけなさいよということなのでしょう。

裏を返せば、MU-2はフライトエンベロープのある条件で「横滑りし易い」し、また横滑りから回復するための「ロールコントロールが難しい」機体であると・・・これはすなわち「螺旋不安定(Spiral Instability)」な形態であることを意味します。

MU-2の Spiral Instability (Lack of Spiral Stability)についての証言があったので以下に紹介します。
「Having logged about 325 hours in the aircraft in less two years, Taylor admits it flies differently than airplanes with aileron roll control. He said it‘s a “little disconcerting” in that it has a slight tendency to keep rolling in a turn, lacking the spiral stability of some other aircraft he’s flown. 」
出典:
http://www.iasa.com.au/folders/Safety_Issues/FAA_Inaction/whatswrongwithMU2.html

次回は「螺旋不安定」について、まとめる予定です。
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MU-2のFatal Accident は操縦ミスが主要因? [MU-2]

最近話題というか問題となっている印象操作ではありませんが、今回のお話を理解しやすくする為に、まずはある図とその解説からイメージを作っていただきたいと思います。
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出典:
https://hutdb.hiroshima-u.ac.jp/seeds/view/709/ja
この図は失速特性改善の研究成果を示すものですが、この図をみて、皆さんはどう感じるでしょうか?

(注記)最初に投稿した時点で誤解していたので、以下に訂正前の誤解があった一節と併せて、訂正したものを追記しました。
・・・・・・・・・・・・・・訂正前・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
研究目的に対する成果に素直に着目すれば、オーッ!一目瞭然な効果は素晴らしい
と感じるのが普通の感覚だと思います。

ところがです、自分のようなひねくれ者は、えっ!失速した後は大丈夫なの?
とうがった見方をしてしまうのです。失速限界をギリギリまで抑えた結果の「副産物」として、その境界点(閾値前後)での「物理的ギャップ」が増長されてしまっているのです。
・・・・・・・・・・・・・・以下、訂正後・・・・・・・・・・・・・・・・・
自分は最初、誤解してしまったのですが、この研究は失速限界をギリギリまで抑えた結果の「副産物」として、その境界点(閾値前後)での「物理的ギャップ」を出来るだけ抑え「なだらかに」するというものです。

実機に採用した際に、失速時に突然ガクッと変化していきなり制御不能な状況に陥いってしまわないよう、いいかえると特性カーブで見たときに失速点のピークを過ぎたところに断崖絶壁が存在しないようにできたよ!っていう図なのです。
・・・・・・・・・・・・・・以上、訂正後・・・・・・・・・・・・・・・・・・
出典元の研究関係者各位にはお詫び申し上げます。失礼致しました。

ここでMU-2に話をもどして、不幸にもFatal Accident に至ったケースでは引き返すことのできない何かしらの閾値(イメージ図の「改善前の」失速限界)を越える状況に陥ったのではないかと思うのです。一方 FAAの質問状にMU-2には問題ないと回答した方々は、その生死の境目となる閾値(イメージ図の失速限界)の手前の安全領域からはみ出した事がない幸運な人達とも言えるでしょう。

この事は、何もMU-2に限った話ではありませんが、だからこそFatal Accident に至った事例での「不幸な証言」を得るために、大型機ではボイスレコーダーやFDRが搭載されるようになったわけで、これまでMU-2を安全領域からはみ出さず無事に飛ばしてこれた人達の「幸運な証言」をもって、マニュアルも含めてのシステムとしての「MU-2には問題なし」と言い切ることは、犠牲者を冒瀆することになるような気がしてなりません。

ところで、米国のMU-2パイロットには米軍パイロット出身者も多いようですが、国内でのMU-2 Fatal Accident の7件中6件は自衛隊機であって、いわば「MU-2のプロフェッショナルパイロット」による操縦中に発生したものです。米国での事故統計にはパイロット一人でのケースも含まれるのに対して、自衛隊機では基本、正副2名のパイロットが搭乗するので、それにもかかわらず米国と国内のFatal Accident の発生頻度がほとんど同じである事については、運用目的が異なるとはいえ、同じマニュアル(運用限界)を守って操縦することに変わりないことから、単に操縦技量の差に起因してFatal Accident に至る事があると結論づけるには違和感を覚えるのです。

ここまでくると、FAAのアクションによって、何がどう改善されたのかまで具体的に掘り下げてみたいとも思うのですが、正月休みは後2日なので先を急ぎます。つづく
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FAAのアクション(2005年秋) [MU-2]

これまでの記事で「重大(致死)事故」「事故(死亡)事故」など表現が不統一だったので、以後「Fatal Accident」という表記にして、過去記事もおいおい訂正しておきたいと思います。

MU-2の米国における Fatal Accident の累積カーブの赤い丸印の所で何かありそうだと言いましたが、前回の記事で紹介したレポートがまとめられた時のFAAのアクションが、2005年あたりでの変化の要因となったようです。

Fatal Accident が連発したタイミングでNTSBから何かしらの働き掛けがあったのかな?と想像したのですが、この時はコロラド州での連続事故がきっかけで、同州の議員がMU-2の飛行停止を求めてFAAに圧力をかけたようです。
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出典:以下のpdf 21/24
https://www.faa.gov/aircraft/air_cert/design_approvals/small_airplanes/cos/mu2_foia/acs_responses/media/acs1_15.pdf

このレターはFAAがMU-2のパイロット他の運用関係者にMU-2の運用において、操縦不能となる事態に陥った事が無かったかという主旨でのヒアリング調査における回答の一つで、最初の数行にコロラド州の議員の話が出ています。

FAAからの質問状は以下の通りです。
0E4812A8-8627-43EB-A063-10E9C254CC51.png
出典:以下のp58 (pdf 63/121)
https://www.faa.gov/aircraft/air_cert/design_approvals/small_airplanes/cos/mu2_foia/media/Appendices.pdf

この質問状に対しておよそ150名のMU-2運航関係者からの回答が公開されています。
以下は、その集計表の一部ですが「MU-2は問題ないが、それなりの訓練は必要」といった論調が目立ちます。
9AA7C35E-DFF8-49E1-9062-1E85597CB1EB.png
回答結果の集計表は上記出典のFAAからの質問状の書式の後のページにあります。

FAAはこの調査結果を受けて、MU-2のマニュアル見直し(要求?)を行っているようですが、変更後の運用マニュアル案には「OEI(片発)条件でのバンク角を30°以内に抑える」旨の記載があります。もともとそうだったかどうかが気になるところです。
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機体損耗率に相当する指標による比較(米国) [MU-2]

10万飛行時間あたりの Fatal Accident 発生率の指標とは別に、MU-2は調達(登録)機数のうち(米国、国内ともに)1割以上の機体で Fatal Accident が発生していることも報告しました。

この機体損耗率に相当する指標での比較データについても
https://www.faa.gov/aircraft/air_cert/design_approvals/small_airplanes/cos/mu2_foia/media/Appendices.pdf
のp30(pdfファイル35/121)にありましたので、以下に紹介しておきます。
4EC69166-5D97-4A21-A046-50FC255E1FAF.png
混みいった表で判りにくいですが、Fatal %の欄のtotalの数値に注目していただくと、MU-2が12%(1割強)であるのに対して、比較対象機種の平均が5%程度である事が読み取れます。

同じ出典のひとつ前のページには、年間あたりの事故件数が減少傾向にあるのに対して、MU-2の Fatal Accident 発生件数については、およそ2件/年の頻度から改善傾向がないことを示す図
20B0C419-6381-4C1F-A068-33D83E9D666E.png
が掲載されています。

2018.01.03追記:

航空自衛隊 F-104 の機体損耗率について


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10万飛行時間あたりの Fatal Accident 発生件数の他機種例(米国) [MU-2]

先の記事で米国、国内ともにMU-2の Fatal Accident 発生率が、10万飛行時間あたりおよそ2件の頻度であり、それがスーパーホーネット並みであると報告しましたが、他の小型民間機でどのくらいであるかを示すデータがありました。

出典はMU-2の Fatal Accident 発生率の高さを懸念してFAAがまとめたレポートのひとつ
https://www.faa.gov/aircraft/air_cert/design_approvals/small_airplanes/cos/mu2_foia/media/EMB110%20BE99%20Metro%20Paper%20Final.pdf
です。

そのレポートから比較対象の3機種について、 Fatal Accident 発生率の経年変化を示す図を紹介します。
EB2F6A41-1914-40B6-B950-1FF193F15E57.png
いずれの機種も最終的に0.5以下程度に落ち着いていますので、MU-2はその4倍程度リスクの高い機種だと言えそうです。

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国内におけるMU-2の Fatal Accident [MU-2]

米国での Fatal Accident 発生頻度の記事を書く前にことわっておくべきだったのですが、今回あらためてMU-2の事故において犠牲となられた皆様方のご冥福をお祈り申し上げたいと思います。また、ご遺族の方々にとっては忘れてしまいたい事故に関する記事を投稿することをお許しいただければ幸いです。

将来、同じような事故が発生しない航空機を設計開発するために、それを担う次の世代の方々にMU-2での事故からなにかしらの教訓を導き出していただくことが、マイカテゴリー「MU-2」における記事投稿の目的です。

さて、今回の本題です。

国内のMU-2最大ユーザーであった航空自衛隊の救難機MU-2Sについての以下の記事
「MU-2は、昭和42年に、空自初の本格的な捜索機として導入され、計29機が就役した。MU-2が就役した約40年間で総飛行時間は22万時間を超え、航空救難、災害派遣等の任務遂行に多大な貢献をした。しかし、この間、4件の航空大事故があり16名の尊い人命が失われた。」
出典:http://boueinews.com/news/2008/20081115_4.html
より、MU-2Sの Fatal Accident 発生率は

4件/22万飛行時間×10万飛行時間=1.82


と算出されます。
民間機と救難機では、パイロットの技量も運用条件も異なりますが、米国での Fatal Accident と同程度の発生頻度であったことが判りました。

あと、航空自衛隊では救難機MU-2S(MU-2Eベース)の他に、飛行点検機MU-2J(MU-2Gベース)4機が運用されていましたが、MU-2Jでの Fatal Accident はなかったようです。

また、陸上自衛隊で連絡偵察機LR-1(MU-2Cベース)が20機調達されましたが、 Fatal Accident は2件発生し、9名(うち1名は民間の医師)が亡くなっています。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/MU-2

MU-2JとLR-1の累積飛行時間が確認できた時点で、自衛隊機のMU-2シリーズ全体としての Fatal Accident 発生率も算出してみようと思います。

自衛隊機以外では、
http://dansa.minim.ne.jp/CL-MU2-00-index.htm
によると、三菱重工業の社有機も含めて民間機のMU-2は国内で11機あったようですが、このうちの1機、JA8753が行方不明となっています。
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/detail.php?id=329

以上、まとめると
 運用者   型式   調達機数 死亡事故件数  犠牲者数
航空自衛隊  MU-2S   29機    4件     16名
航空自衛隊  MU-2J    4機     0件      0名
陸上自衛隊  LR-1    20機     2件      9名
国内民間機  MU-2Bほか 11機    1件      1名(行方不明)
合計           64機    7件     26名

調達機数の1割以上(7機/64機)で Fatal Accident が発生していた点においても、MU-2の米国における Fatal Accident 発生頻度と同等であることが見えてきました。

個々の事故の詳細については、後日まとめようと思います。
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