SSブログ

MU-2 プロペラ後流の影響(新たな仮説) [MU-2]

久しぶりの投稿です。今回、画像の直接貼り付けが無くて見栄えが悪いですが、その分リンクを充実したのであしからず。

用語のおさらい
後視:進行方向に向かって
CW:時計回り
CCW:反時計回り

先に紹介した”左旋回中に操舵輪を右にきったまま”の動画
https://youtu.be/_GeH4DlAWuQ
で、この機体:D-IAHT
http://www.flickriver.com/photos/tags/diaht/interesting/
のプロペラ回転方向が「後視CCW」であったことから、「プロペラ後流による主翼上面の加速域の偏りにより左右主翼の揚力差が発生する」という先の仮説による揚力差とは”逆方向”にロールさせる力が作用していたことが判明しました。尚、この動画紹介の投稿当初は横滑りしているかどうか不明でしたが、右席の操舵輪の軸が計器パネルを貫通する孔の右に位置する、Turn Coordinator
https://www.google.co.jp/search?q=turn+coordinator&tbm=isch&ved=2ahUKEwjQ4bGshfbdAhVXxWEKHUffCmwQ2-cCegQIABAC&oq=turn+coordinator&gs_l=mobile-gws-wiz-img.3..35i39j0j0i30l3.22924.24057..27689...0.0..0.92.508.6......0....1.........0i19.SIJS2Ie3K58&ei=pOG6W9D_LteKhwPHvqvgBg&client=safari&prmd=isvn&biw=768&bih=922&hl=ja-jp
が時々見えるタイミングでは釣り合い旋回出来ている事が判りました。

これまで「後視CW」で回転するプロペラを有するPS-1やUS-1で問題となった「左傾左旋」注1
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/101/touh/t101024.htm
と同様な事象がMU-2(初期のタイプは後視CW)にも発生しているという仮説を前提としていたのですが、この動画の機体(D-IAHT)では「後視CCW」で機体が「左傾」する特性に対して当て舵(操舵輪を右にきること)によって姿勢保持していたのです。

そこで今回は「左旋」の部分はさておき、MU-2の「左傾」について以下に見直しました。

PS-1やUS-1では「後視CW」のプロペラ後流による主翼上面流れの加速域の右舷側への偏りが、特に低速時に顕著となり、その結果左右主翼の揚力バランスが崩れ「左傾」するというものでした。US-2ではこれを解消するためプロペラ軸を3°程度右に傾け、いわゆるサイドスラストを発生させています。近くから観ても判り難いですが望遠で撮影されたUS-2の正面からの映像を観るとよく判ります。以下のページの2つ目の写真は正面よりやや右舷側からの映像ですが、左舷外側の1番エンジンポッドがカメラに正対しているのが判ります。
https://blogs.yahoo.co.jp/hiroki_h2/41854397.html

どうやら”旋回中のMU-2”では、US-1(主翼上面の加速域の偏り)とは別の現象、しかも「一般的な?Pファクターによる作用と逆方向」でありプロペラの反動トルクをも打ち消してロールさせる何かが優位に作用しているようなのです。

【仮説1】プロペラ後流による主翼下面の加速域分布の偏りの影響
これは単に「後視CW」でなく「後視CCW」だったので「主翼上面」ではなく「主翼下面」での現象が優位に現れるという発想です。プロペラ後方に位置するフラップはプロペラ後流を下方に偏向する効果もあるので、特にフラップ下げ時に効く可能性はあり、機速が落ちる旋回中に顕著になると言えそうです。

【仮説2】プロペラ後流による主翼迎え角の分布の偏りの影響
「後視CCW」のMU-2ではプロペラ軸の左側で主翼に対する吹き降ろしがあり、右側で主翼に対して吹き上げがあることから、特に高出力の時に「左傾」が顕著になるという理屈です。この仮説で水平飛行から旋回に入った際に機速が落ちて影響が顕著になることも説明できそうです。

いずれにせよ、MU-2のように主翼スパンに対するプロペラ直径の比がある程度大きな形態では、プロペラ後流による主翼揚力への影響が複雑になり、その分布の偏り方が変わってくるようです。MU-2と同様に主翼スパンの割に大きなプロペラが左右同方向に回転するOV-1
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Grumman_OV-1_Mohawk#/media/File%3AOV1.890InFlightStanleyCounty_(modified).jpg
の特性がどうだったのか気になるところです。垂直尾翼をわざわざ3枚にしたのは、片肺飛行の際に生き残ったエンジンのプロペラ後流を受けられる位置に、方向舵を置くためと考えられます。

ちなみに、MU-2は当初、プロペラ後流の主翼への影響を極力抑えるべくエンジンポッドを主翼から吊り下げる形態で配置しプロペラ軸は主翼からかなり離れていました。次のリンク先の「機体」の項目の最初の画像が初期形態です。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/MU-2#/media/
ところがプロペラ直径(エンジン出力)の増加によりプロペラ軸は主翼に接近することとなり、プロペラ後流による主翼への影響が大きくなった事は明らかです。
https://goo.gl/images/8q1osW

注記1:これまで「左旋左傾」と紹介してきましたが「左傾左旋」が正しいようです。元の表現は「左傾左旋回傾向」です。
https://www.engineer.or.jp/dept/mech/record/resume/resume2005/resume0507-2.pdf

nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。