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MU-2 の上反角効果について:更なる疑惑 [MU-2]

MU-2 のプラモを眺めていて、また新たな疑惑が
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「MU-2 に採用した上反角効果調節フィンについて」
日本航空宇宙学会誌 第22巻 第247号 (1974年8月)p33-36
によると、チップタンクにも上(下)反角効果が作用するとのことであるが、
疑問①
よりボリュームのあるエンジンポッドによる上反角効果は考慮しないの?
疑問②
①以前の問題としてエンジンポッド周りのプロペラ後流(旋回流)の影響はどうなの?
疑問③
エンジンポッド内側すなわち翼胴接合部でのプロペラ後流の影響は無視できないはずでは?

素直に考えてみると・・・
プロペラ回転方向が後視CWの場合
→左翼胴体接合部迎角<右翼胴体接合部迎角
言い換えると、同方向プロペラ回転双発機の場合はPファクターを助長する方向に作用し
→上反角効果は横滑りの方向によって大きく異なる
という結論に至ってしまうのです。

さらには
高翼配置による上反角効果は
→主翼前方の「胴体長さ」によって異なるはずで
→主翼前方の胴体が短いMU-2では、翼胴干渉による上反角効果は理論値より小さくなる

ここまで疑問が膨らむと、
エンジンポッドとプロペラ後流がない次の図(出典:上記)も
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この断面の先にはイルカの頭のような機首しかない以下の図(出典:上記)も
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いずれも、絵に描いた餅にしか見えなくなってしまいました。

因みに
「胴体長さ」で思い出したのは、木村秀政先生が、戦前(昭和16年11月)に自身の講演で、山名正夫先生の螺旋不安定にまつわる評価式の追認試験に対してケチをつけていたという事を以下の論文で知りました。

「垂直尾翼容積と螺旋不安定度」
日本航空学会誌 昭和17年1月 第9巻 第81号 p32-36

この論文を斜め読みした限りでは、当時、木村氏が理論研究、山名氏が実証研究をベースに活動してたのかなと想像しました。理論派 vs 実証派 の構図です。

戦後、木村氏はYS-11の開発で設計顧問的な立場で関与してたようですが、螺旋不安定の大家?木村氏の理論
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を持ってしてもYS-11の螺旋不安定は見抜けなかったのは、残念なことです。

木村先生と山名先生の確執は、柳田邦男氏の「マッハの恐怖」で有名ですが、B727羽田沖墜落事故の調査において、調査委員長であった木村氏の方針が受け入れ難いとして、山名氏が委員を辞退する程のものだったようです。当時の航空機産業界としては、悪者を作らず丸くおさめる委員長としての木村派が多数で、あくまで物証ベースで探究すべきとの山名派が少数だったようです。
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